白金
曜日を忘れていても、街を行きかうお姉ちゃんの
格好でだいたい今日が金曜日だということはわかる。
開業から5年経つという小奇麗な店のカウンターに
既に仲間は集まっていた。
この日ハワイから到着したフランキーもご機嫌のようだ。
とりあえずビール!
ブロッコリーの胡麻和えや蟹サラダなどを
パクつき、落ち着いたところでハウスワインに移行。
悪くない。
いや旨いんじゃないか、この店。
これまで何故来なかったんだろうか。
いや、東京も広いということだろう。
そうこうしているうちに、ぶたしゃぶ。
これがまた不思議。
湯にくぐらせても、ほとんどアクが出ない。
肉の切り方に理由がある。
実際に行って見ればわかる、むふふ。
満腹だ。
久々の超満腹。
ワイン好きのフランキーのために伝説の店へ移動。
なに食べてきた? とマスターが開口一番。
ぶたしゃぶを少々。
メルローだったよ。
そうだね。
すき焼きだったらカベルネがいいけど。
じゃあ。。。
と言って、まず抜いてくれたのがサッシカイアの1989年。
グラスに開くとセクシーなホワイトリングが
しっかりと輝く。
やさしい味だ。
落ち着きがある。
それもそのはず。
マスターがワインを保存する状態は並じゃない。
見てよこれ、とても20年前のコルクとは思えない。
右側5ミリくらいしかワインが染み込んでいない。
普通ならとっくにコルク全体がぼろぼろだぜ。
今夜オレたちに飲まれるために20年間も誰にも
触れられず、秘めやかに生きてきたんだねーキミは。
何十年ぶりに御開帳される秘仏を見るときと
似た少しセクシーな気分に浸りながら、オレたちは
マスターが次から次に持ってくるシャトーマルゴーの
年代もののボトルを肴に_| ̄|○
もっと安いワインを沢山飲んだ。
横浜マリンタワー 2
昼飯は中華だという気分になり、天現寺から横浜へ。
金港JCTを過ぎる。
太陽は出ていないが、夏の白く明るい空をバックに
ランドマークタワーがくっきりと目の前に現れる。
ハマはいいねー
広い店内の奥の厨房。
昼の混雑はもう終わって客はまばらだ。
おばちゃん居る?
おや、珍しいね。
そうでもないだろ。
違うよ、この前と同じコレじゃないか。
おばちゃんはこっそり小指を立てる。
ハハハ、余計なこと言ってないで、なんか出してくれ。
午後遅い時間まで、オレたちはおばちゃんと
いろんな中国茶を飲みながら昔話をした。
このおばちゃんもオレにとっての横浜なんだなぁと思う。
長生きしてくれよ。
夕暮れのベイエリアを新装マリンタワーから眺めた。
湾岸線に乗ったオレは、野菜とフルーツで晩飯を済ませ、
久し振りに走って汗を流してみようと思っていた。
東京駅
前にも書いたが、世の中こんな状況だから
オレの商売は繁盛しちまっている。
様々な欲望と折り合いを付けたがっている
人間たちに、高値で知恵を付けることが
商売になるのが今の東京だ。
朝とか夜とか関係ない。
曜日感覚も無くて当然。
人は欲望に従順だ。
日が暮れてしばらく経った。
時計を見ると8時を回っている。
これで会うのも最後になる目の前のクライアント
に、いま受け取った報酬で飯でもおごるか。
そんな気分になった。
近くで気の効いたレストランは?
休日には出勤しないボンの携帯を鳴らす。
それだったら東京駅の駅ビルに。。。
騒がしいBGMの中からボンの声が聞こえる。
彼女のサジェスチョンはいつも的確だ。
その時の気分と相手との関係を言うと
大抵は満足のいく結果になる。
メインのフィレより、これが食いたかった。
そして、予想通り、メインよりこれが旨かった。
バターとチーズの配合が絶妙なソースも旨い。
仕事がきれいに片付いたとき、なぜか肉ではなく
旨い野菜料理が食いたくなる。
いつの頃からだ?
その理由さえ見つけられないまま、
東京の夜景をオレはぼんやり眺めていた。
Waioli tea room から Manoa まで
ということでさ、
もちろん、オレはハワイからとっくに帰ってきているわけだけど、
東京って街はどんどん節操無い状態になっている感じがする。
ハワイを含めて田舎のいいところは、静かなところだ。
東京ではなかなか得られない静けさの中にいると
人間てやつは不思議と内省的になるらしい。
そんなときに東京に居る時には考えたことも無いような
ことを考えることができる。
久し振りに Ainahaina の元カノの家に行って見ようかとか、
Pearlridge のルームメイト(やっぱり元カノ)とゴルフでもしようかとか、
ん? どれも女絡みだ_| ̄|○
ともかく、田舎はやることが少ないのもいいところなのだ。_| ̄|○
ブランチにはWaioli tea room に行き、湿気をたっぷり
含んだ空気を吸いながら妄想に耽る。
すぐ隣の教会で懺悔する。
_| ̄|○
そして、すぐ近くのマーケットの旨いパン屋で
食パンを買い、部屋に戻る。
夕方、Waialae でドライバーをウェッジのように打つ練習をした。
気付くと今回のハワイ最後の夕食の時間が近付いていた。
ここ数週間、東京の警戒レベルは確実に上がっているので商売も
しにくいが、隣国がちゃちな戦闘態勢に入っているから仕方ないか。
Good morning, Honolulu.
昨夜、Waikiki で試した足裏マッサージが効いたのかもしれぬ。
目覚めが事の他よかった。
ラナイに出る。
Manoa の稜線が強烈なオレンジに包まれ始めている。
今日も絶好のゴルフ日和だぜ。
ニヤニヤしたままシャワーを浴びる。
朝食は、バナナとヨーグルト。
あとは、マカデミアナッツコーヒーを落とせば完璧。
エレベーターでジョギングに向かう金髪娘と無駄話。
良いハム筋が付いている。君のジョギング、いや、
ランニングはファッションじゃないね、そう言うと、
私のやることには全て意味があるわと言う。ふむ、
意味のあるセックスはどんなのか、と聞こうと思ったが
朝から顔に痣を作るわけにもいかずパーキングロットに直行。
朝の練習は Ala Wai が近くていい。
借りているコンドからは McCully から Date に抜けても
行けるが、なんとなく海沿いを走りたい。
Kalakaua から Kapahulu を走る。
まだひんやりとした朝の風が心地よい。
なんだか、
今日はイケそうな気がする~♪
結果は。。。
Waialae で大わらわ、 って感じだった。
_| ̄|○
東池袋
複雑な話だった。
男女の仲に金が絡むと、厄介なことは際限なく出てくるものだ。
また、そういう話に限って関係者が多いときている。
高層ビルの窓からずっと見えていた眺めだけがオレの味方だった。
2時間も密室に居るというのは体がいやがる。
出口が見えた。
潮時だ。
結論は出ていたのだ、オレのひと言で一同席を立つ。
よしよし。
羽田の時間も気になりだしていた。
環状線外回りが銀座できつめの渋滞。
護国寺を避け、遠回りだが代官町を目指す。
春の首都高のアスピレーションは一年の中で
最も心地よく、ついつい踏み込んでしまう。
目の前の欲望には負けるタイプだ _| ̄|○サスが追いついていない。
タイヤか。
浜崎橋のカーブを抜ける。3速から2速。
1号線の直線。3速でレッド。
4速に入れながら、そろそろ足回りをいじらねば
とオレは思っていた。
恵比寿 14
駅前ロータリーから路地を入り、100mほど行く。
雑居ビルの2階。
知らない客はふらっと入りにくい。
オレたちからすると何でも言えば出てくる、ドラマ「ヒーロー」の
St.George's Tavern のような店だ。
環状線を避け、レインボーブリッジも下を通ってきたので
ほぼ約束の時間通りに到着した。
チョイ悪どころか、かなり悪かったオヤジたちがまた集まっていた。
今じゃメディアが飛びつく実業家や社長ばかりだが
ターンパイクを料金所から200以上でかっ飛ばし、頂上でメットを取って
談笑中に途中で張っていた白バイがやっと追い付いてくるのをからかう
オヤジや、パッチギを地でいくオヤジや、湘南の海で女がトイレに
入っている間に持ち物を全て車から放り投げ女ごと捨ててくるオヤジや、
300ヤード軽く飛ばすオヤジや、
過去と現在の話が行き来し、話はまた際限なく広がっていく。
何度会っても新しい逸話が飛び出す。
それぞれのハワイの友達が友達同士だということがわかったり。
世の中が広くなっているのか狭いのかよくわからない。
ともかく、
久し振りの70台が出そうな内容だったし、
スッゲー笑って、飲んで、ぐっすり眠れた夜だった。