東京駅
前にも書いたが、世の中こんな状況だから
オレの商売は繁盛しちまっている。
様々な欲望と折り合いを付けたがっている
人間たちに、高値で知恵を付けることが
商売になるのが今の東京だ。
朝とか夜とか関係ない。
曜日感覚も無くて当然。
人は欲望に従順だ。
日が暮れてしばらく経った。
時計を見ると8時を回っている。
これで会うのも最後になる目の前のクライアント
に、いま受け取った報酬で飯でもおごるか。
そんな気分になった。
近くで気の効いたレストランは?
休日には出勤しないボンの携帯を鳴らす。
それだったら東京駅の駅ビルに。。。
騒がしいBGMの中からボンの声が聞こえる。
彼女のサジェスチョンはいつも的確だ。
その時の気分と相手との関係を言うと
大抵は満足のいく結果になる。
メインのフィレより、これが食いたかった。
そして、予想通り、メインよりこれが旨かった。
バターとチーズの配合が絶妙なソースも旨い。
仕事がきれいに片付いたとき、なぜか肉ではなく
旨い野菜料理が食いたくなる。
いつの頃からだ?
その理由さえ見つけられないまま、
東京の夜景をオレはぼんやり眺めていた。