赤坂5
Sacas で、すっかり動線が変わったね、一ツ木通り界隈。
でも、人の流れに逆らいたくなる性分のオレ。
行くのは、目の前にタワーが出来ても、
ひっそりと昔の風情と味を守る一軒の店。
暖簾をくぐると小上がりとカウンター。
常連客がカウンターに二組ほど居る程度。
バブルの頃はいつ来ても満員で大変だったが、
このくらいの落ち着きが丁度いい。
オレたちもカウンターの奥に座る。
じゃあ、いつもの。
あ、でも、鯛めしはこの雷神光っていう米で炊いて。
3合ありますから、1合余りますけど。
じゃ、あとは適当に食べて。
あと、ビール。
はい、ただいま。
そんなやりとりで幸せな時間が始まる。
突き出し、煮凝り、炊き合わせ。
何が出てきても旨い。
旨っ!
出汁がいいねぇ!
結構食べて飲んでるはずなのに、ここの鯛めしは
2回はおかわりしちゃうね。
ふぅ~
お腹が一杯になるだけではなく、気持ちも幸せになる。
そんな満腹感。
ここで帰れば優等生なのに、赤坂のど真ん中から
9時前に離脱するのは容易じゃない。
タクシーに乗ったのは1時を少し回ってからだった。
森を歩く
東京はすっかり春だ。
が、富士のふもとは別世界。
朝から山に入る。
山で遊ばせてもらうためにきたのだ。
無心に歩く。
飽きるまで歩く。
冬山に比べれば、すべてが優しく暖かい。
時折、動物の気配で足を止め、相手が動き出すまで
オレも何分でも気配を消してみる。
傾斜を駆け上がり、反転傾斜に垂直な姿勢で
駆け下りる。その勢いで木に登る。
口笛で鳥を呼んでみる。
日差しが暑いほどになってくる。
ザックを枕にして枯れ草に横になり、目を閉じる。
どれくらい寝ていたのか。
風の音で目が醒める。
コッヘルで湯を沸かす。
イタリアンローストをフィルターに乗せ、ゆっくり湯を落とす。
そこで動いているのは湯気だけだ。
日が傾き始めると気温は途端に氷点下に近付いていく。
息が白い。
煙草を一本吸い、車に戻った。
イグニッションキーを回そうとして、しばらくドアを開け放ち
辺りの静寂を楽しんだ。
だが、六本木での待ち合わせもあるので、
オレは何かを振り切るようにエンジンに点火した。
千鳥ヶ淵
週末の夜。
もうこれ以上は咲けんとばかりに花びらを広げている桜を見上げた。
花見に出掛けたというより、所用で番町に行った帰りに、
礼美と待ち合わせてぶらついただけだが。
昼もいいが、夜もいい。
日本人が桜に見出すメンタリティとは潔さの象徴か、
はたまた凛々しさ、儚さ、気高さか。
あんなにキレイな桜が散ってしまうのは、やっぱり寂しいと思う?
夜桜見物で冷えた体を温めようと、
湯を張ったバスタブに浸かりながら礼美が聞く。
オレの胸まで伸びてきた礼美の足裏をマッサージしながらオレは答える。
やがて無くなると思うから寂しいんだよ。
でも、実際に盛大に散っている時の桜を見たことあるか?
あれは見ていて気持ちいいぜ。
精一杯頑張って、昇天しているようだ。
昇天なんだ、涼らしい。
私は、繋がっていると思うから、そのあとも楽しみ。
桜が散るということは、新緑の季節の訪れだもの。
桜も咲いて散るだけなのに、
人も生きて死ぬだけなのに、
受け止め方はいろいろだ。
そんなことを考えながらオレはビールを沢山飲んだ。
夜風が気持ちよかった。
八重洲 1
いくつになった?
と聞かれて即答できない歳になっちまったよ。
_| ̄|○
言いたくないのではなく、覚えていないということだ。_| ̄|○
うん?あれ、と思いながら昭和83年換算したり、西暦で計算したり。
ああ、そうか、やべ、間違えてた、みたいなことが起きだしたぜ。
ま、そんな話はいいから乾杯、乾杯。
それにしても、やれ誕生日だ、やれお祝いだと言って誘いがあるうちが華だ。
この重厚な構えのレストラン、
ヌーベルクイジーヌならぬ、ヌオボイタリアーノとでも言うのだろうか。
動物性油脂などは使用しない方針らしいが
決して淡白過ぎるという印象は無い。
確かに、野菜の扱いが上手い。
ふむ、礼美が好きそうな味だ。
近いうち連れてきてやろう。
礼美は山Pファンらしい。
_| ̄|○
袋田の滝
今年は暖冬なのか、そうでもないのか
わかりづらい。
それは北関東とて同じこと。
実は茨城は栃木、福島との県境にあたる大子町辺りまで
基本的には関東平野ということになっており、
この時期でもスタッドレスは常備品ではないらしい。
昨日まで現地に居たらそんなことも言ってられないが、
そこそこ冷え込んでこないと袋田の滝も凍ってはくれない。
先週金曜日に水戸まで来たついでに大子町で
湯にでも浸かり、常陸牛でもつつきながら酒を飲んで
そのまま寝てしまう、なんていうのはどれほどご機嫌なんだろう
と思ったら最後、イッちゃうね。
こりゃたまらん。米沢、神戸に負けてないぜ。
来て良かった。
ナンダ、この漲る力!
ヒ立チ牛 ナンツッテ_| ̄|○
翌日、午前中に袋田の滝に出掛けた。
前日までそうでもなかったらしいが、この日はなかなかの凍りっぷり。
もう少しで全凍だ。
そうなったら、アイスクライミング野郎が結構来るのだろう。
秋にまた来たいね。
帰りの常磐道は至って順調。
交換したブースターを試すのには格好のコンディションだった。
あの頃
すれ違うと同時に声を掛ける。
全体の印象さえ違和感を覚えなければ
とにかく声を掛ける。
アマンドの前。
みゆき通り。
ポルシェビルの前。
場所も気にしない。
水商売にOL、看護婦、家事手伝い、人妻、後家さん、女子大生。
手当たり次第だった。
そんなダチに付き合って、んなもんは簡単よとばかりに真似てみる。
だんだんコツがわかってくる。
何事も経験だ。
時が来れば飽きてくる。
その時の教訓と言えば、
女は決して外見では判断はできんということくらいだ。
いや、それが実に奥深い話のオンパレードでもあるのだが、
若気の至りを開陳する趣味は無いのでここでは書かないが。
いま?超厳選ですよ、とびきりの女しか口説かないね。そして、
あの頃。
冬はやっぱり山に居た。
色めきたつ夜の街も好きだったが、
雪以外何も無い山に向かっていく自分も好きだった。
伝説のスキーヤーが居た。
テレビにかじりついた。
孤高の天才ステンマルクや、スラロームからスーパーGSまで
常に上位に入るオールラウンダー、マルク・ジラルデリ。
ベッドでも内転筋を鍛えながら腰を動かしていた。
_| ̄|○
うん、そうだな
あの頃と基本は変わっていないね。
どこまでいってもオレはオレだ。
欲しいものは欲しい。
今日も爆弾低気圧でいい雪、降ってんだろうなぁ。
この板もかなり欲しい。