有楽町 2
身勝手なスポンサーが口出しすることなく、
ちゃんとした原作を力量の確かな監督が作品にすると
まあまあのヒット作となる。
この当たり前を最近では、邦画が元気だ、という視点で
語ることが多いようだが、プロモーションの現場は相変わらず大変なようだ。
ということで、今夏公開予定の邦画を配給会社の試写室で観た。
正確には観てほしいと言われたわけだが。若年性アルツハイマーになった母親の住む小豆島に、
少年がひとりで、しかも自転車で向かうという物語だった。
原作の帯にも「涙でページがめくれなかった」、とか
映画関係者も「ストーリーがわかっていても観てる度に号泣する」、とか
そんなことを吹き込まれ過ぎたせいか、
オレは、ラストでちょっと目頭が熱くなった程度だった。
意地でも泣くもんか、と思っていたわけではない。
全部で20席ちょっとの試写室には、オレの他に2人しか
居なかったので、号泣でも嗚咽でも周囲を憚らずに
大いにしてやろうかと思っていたのだが。
やはり、オレはノンフィクションの世界ではないと
涙が出ないということがよくわかった。
銀座地下駐車場に向かいながら、オレは最後に
泣いたのはいつだったのか、思い出していた。